撤退戦略

日本経済における長期の成長で撤退は美徳に反することとして、前向きな撤退戦略を考えることは見られませんでした。しかし、社会・経済の全てがグローバル化し、世界的な規模での競争が激化している現代においては、たとえ赤字に転落していなくとも競争力が十分でない事業から撤退し、国際的に見て自社の競争力のあるドメインに経営資源を集中していくことが重要になります。

そういう意味で効果的で前向きな撤退戦略は大切です。撤退が行われる理由としては以下の4つの条件が考えられます。

 

①見通しの誤り

②市場競争に敗北

③需要減少・市場消滅

④ドメインの再構築戦略

 

また撤退を決める場合に注意をしなければならないのが「撤退障壁」です。ある事業から撤退しようと考えても、それを思いとどまらせる要因が企業には存在します。それを撤退障壁とよびます。撤退障壁として考えられるものには以下の要因があります。

 

①耐久性のある専門特化した資産の存在

②設備撤去など高額な設備撤去費用

③社内他部門との要因

④経営者の事業への愛着や従業員への配慮など心理的要因

⑤政府や社会的制約

⑥他製品・他事業とのシナジー面での配慮

 

撤退障壁の高い業種においては、低収益構造であっても撤退が進まず、その結果として業界内での競争激化が続き、業界全体が低収益に悩まされることになります。