「社長のキャッシュ感覚」で成長する

突然の質問で恐縮ですが、あなたは社長として、「経営の目的」は明確でしょうか。経営の最終目的とは「事業を通じて社長の懐のキャッシュを増やすこと」のはずです。キャッシュを持たない社長が会社を経営しても借入金が増えるだけで、事業は発展しませんし、社会への貢献も果たせません。

日本の企業の経営においては「必要資金は金融機関から借り入れるのが当たり前」また事業をしていて「資金が不足すれば金融機関から借りるのが当たり前」という感覚がまかり通っているのを強く感じます。新たに創業しようとする起業家にも政府系金融機関から容易に借り入れできるようになっているし、最近では起業家向けの「創業補助金」なるものも登場し、ますます「借入金体質」や「補助金頼り」体質が強固になりつつあります。

このような状況下で、特に中小企業においては「資金の活用」に関わるノウハウもないし、また資金活用に関わる知識も不足しています。今後の中小企業は「資金の活用」をいかにうまくやるかでその成長に差がつくといっても過言ではないでしょう。

私が支援する神奈川県の企業A社に「キャッシュ増加」中心の経営を取り入れてみました。経済社会がグロ―バル化した今、欧米の経営の中心になっている「キャッシュフロー経営」のエキスを中小企業に取り入れたのです。その結果、

このA社には税理士がつくる損益計算書と貸借対照表に加えて、当社独自のキャッシュフロー計算書を作成するようにしました。キャッシュフロー計算書は、

日常の営業活動によって得られるキャッシュの増減を示す「営業活動によるキャッシュフロー」、設備投資など企業の投資に係るキャッシュの動きを示す「投資活動によるキャッシュフロー」、資金体質の管理の目安となる「財務活動によるキャッシュフロー」の三つからなりますが、近年のA社のキャッシュフロー計算書を作成してみたところ、「営業活動によるキャッシュフロー」で十分なキャッシュを生み出していないために、十分な投資ができず、借入金に頼った「財務活動によるキャッシュフロー」で資金を創り出し、会社の体質を脆弱な借入金体質に陥っていたことを社長に気づいてもらいました。

 

このA社の社長の気づきが、経営にとっての資金活用の大切さとその資金獲得のプロセスの重要性を認識させました。つまり、日ごろの活動において、どのようにして「営業活動によるキャッシュフロー」を最大化させるかを社長の経営活動の根幹に据えるようになったのです。

 

「営業活動によるキャッシュフロー」を最大化するための社長の取り組みが始まりました。効率的な経営への変化で利益を増加させたのはもちろんですが、売掛金や棚卸資産の早期資金化のための営業管理部門の強化、購買管理部門の充実による効率的な購買のしくみづくりなどを徹底して行い、「営業活動によるキャッシュフロー」を最大化し、「財務活動によるキャッシュフロー」を減少させ、借入金体質からの脱却を図るようになったのです。この時、この社長が実行した主要な管理ポイントは以下の通りです。

・収益力向上のために社員一人当たりの必要売上総利益額を設定

・売上高対販売費及び一般管理費を20%に設定

・購買金額の一律5%削減目標を設定し購買部門に指示

・売掛金残高確認を取引先と年間二回実施

・投資効率の指標として、1,000万円の投資に対し年間2,000万円を上げる事業計画を作成し実行

 

経営とは、事業活動によってより多く手元のキャッシュを借りずに増やすことです。つまり、経営することで社長の懐のキャッシュを増やし、それを基に更なる発展を目指すことです。