借入金の理解で伸びる会社

借入金とは、いずれ債権者に対して返済しなければならないもので、財務上は資本金を自己資本と呼ぶのに対して、借入金は他人資本として区分けされます。借入金には一年以内で返済しなければならない短期借入金と一年以上長期間にわたって返済する長期借入金があります。借入金には当然、そのコストとして支払利息が発生し、その金額の発生は損益計算書を悪化させることになります。従って、本来、借入金はゼロが経営の健全性の視点で望ましい状態です。

愛知県のA社は3期連続の赤字決算企業です。社長から支援依頼を受けてこの企業を支援することになりました。貸借対照表を見ると累積赤字が資本金額に近づきつつあり、このまま放置すると間違いなく債務超過になる状態です。社長は何とか借入をしてこの場を凌ぎたいというのですが、たとえ新規借入ができたとしても、とてもそれで業容が好転するとは思えない状況です。そこで支援する側としては、社長と話し合い、財務内容を精査したうえで、新たな事業改善計画をつくって、銀行に提出し、当面1年間の返済猶予の措置を講じることにしました。借入金については、銀行側にも貸し付けた責任があるわけですから、企業側の改善計画が明確であれば、必ず、協力が得られます。

このような借入金体質で経営が悪化した企業を再建していくためには、自社の販売費及び一般管理費、支払利息額、および借入返済額の合計額以上を売上総利益額で確保するため事業計画を作成して実行することが必須条件です。これが、私が開発した中小企業支援のためのキャッシュバランス経営の基本です。

このケースでもわかるように、多くの社長は経営が苦しくなると追加の借入金で何とか、その場を凌ごうと考えるものです。しかし、これは大きな間違いで、このような状況で借り入れができたとしても、経営はもっと苦しくなります。借入金には新たなコストも発生するのです。

上記の例のように、借入金の意味を理解できた社長は、新たな借り入れを考えずに、現状打開のために自社の経営を根本から見直し、新たなしっかりした計画を立案し、実行することで経営を正常な状態に戻すことを考えます。同時に、自社の経営を借り入れに頼る経営からキャッシュを稼ぎ出す経営への転換を考えるようになります。

すでにみたように借入金とは他人資本でいずれ返済しなければならない資金です。そして、借入金という他人資本には、支払利息という使用料としてのコストが発生します。

話は飛びますが、会社は何故、従業員を雇用して事業をするのでしょうか。雇用した従業員には当然、人件費などのコストとしての費用が掛かります。それを支払ってまで従業員を雇用するということは、その雇用した従業員でそのコスト以上の成果を上げようとするからです。その成果を上げるために、会社は従業員を教育してその能力を高めていくのです。

借入も同様に考える必要があります。借り入れをするということは、支払利息というコストを支払って、その総額を活用して会社としての新たな成果を上げることが狙いです。その成果とは当然のこととして、収益の向上であり、社長の懐のキャッシュの増加です。

そのように考えると、資金を借り入れるということは、他人のお金を借りて使うということです。後ろ向きの目的で借りるのではなく、その資金によって生み出されるキャッシュを最大化することが目的になるはずです。そのためには、しっかりとした、キャッシュ獲得のための事業計画を作成して、取り組むことが大切です。