開発力で伸びる会社

「開発力」で伸びる会社

社長の開発力とは、お客様の「不」の発見力です。

すでにこれまで見てきましたように、中小企業には様々な高いレベルの技術力があります。そして、その技術力を活かしながら、成長していくのが会社です。大きな会社であれば、そこには開発部門があり、中小企業であれば、開発部門は社長あるいは幹部の頭の中にあるのかもしれません。とにかく会社は自社にある技術を活用して多分野へ成長していくのです。

開発部門がその会社においてどのように位置づけであれ、開発に関わる者には使命があります。開発部門の使命とは「市場戦略を構築し、その戦略に基づき、顧客満足の得られる商品を開発すること」となっています。

「市場戦略を構築し」とは、独りよがりの開発ではない、マーケティング手法を導入し、市場性を加味した開発であることを意味します。また、「顧客満足の得られる商品の開発」とは、顧客は誰かを明確にし、その顧客ニーズに対応した商品を開発することを意味します。開発部門はよくマーケティング・マイオピアといわれ、つくることだけに主眼が置かれ、顧客や競合を意識しない「開発のための開発」をする危険性があります。従って、「顧客に支持される商品の開発」つまり「顧客は誰かを明確にし、その顧客ニーズに対応した商品の開発」を心がけることが大切になるのです。

モノづくりの得意な中小企業の社長にお会いすると、「素晴らしい新製品ができました。これは今までにないもので、必ず売れると思います」というような話をうかがうことが良くあります。しかし、ほとんどの場合、その時の社長の頭の中に「誰に売るのか」「誰のために開発したのか」さらに言えば「誰がその製品を欲しいといっているのか」が全くないのです。社長自身が、ズバリ、マーケティング・マイオピアに陥っているのです。

開発した「製品」が「商品」として顧客に受け入られるためには、「その顧客が誰か」を明確にして開発する必要があるのです。

社長が事業を展開する時にはビジネスモデルが必要になりますが、開発に関わる時にも、研究開発のビジネスモデルをしっかりと持って商品を開発することが大切です。

研究開発のためのビジネスモデルとは、「誰に」「何を」「どのように競合と差別化して提供するか」になります。つまり、「誰に」はお客様で、そのお客様がどのようなニーズを持っているのか、そのニーズを満たすものが「何を」であり新たに開発するものになります。また、「何を」が、競合がすでに持っているものと同じでは何の意味もありません。「競合との差別化」が出来ていないと単なる価格競争に陥るだけで何のメリットもありません。また、「差別化」とは何かもよく理解して開発するようにしましょう。「差別化」とは、「単に、ここが競合と違うんだ」という自分が考える身勝手な差別化ではなく、その「差別化」がお客様にとって満足を感じられるもの、お客様のニーズを満たすものでなければなりません。

お客様のニーズを満たす、つまり、お客様が満足する製品を開発すれば、その製品は商品となって購買につながっていくわけです。それでは、お客様はどのような時に満足するのでしょうか。社長ご自身に置き換えていただけばよくわかると思いますが、誰でも自分が「不」に感じているものを解決してくれるものを提供されれば満足するはずです。お客様の感じる「不」とは、「不便」、「不都合」、「不満」、「不自由」、「不具合」、「不適合」、「不愉快」などたくさんあると思います。特に開発に時間をかけられない中小企業の開発の場合には、「差別化」のポイントを「お客様の不の解決」に置くことが大切です。