CVP経営からCB経営へ

日本の企業は損益計算書に基づく経営がベースになっており、あまり、貸借対照表やキャッシュフロー計算書に基づく経営になっておりません。従って、多くの企業において、資産の有効活用がなされず、利益は出ていても資金が足りない、という悪循環が続く傾向にあります。

企業はゴーイング・コンサーンと言われ、永続的に発展していくことが当初から義務付けられています。そのためには、利益を増やすための売上高を確保することは勿論ですが、それ以上に経営を健全化するためのキャッシュを確保する経営が必要になり、当然のこととして経営者の意識の中に、それが根付いていかなければなりません。

以下の図は、損益分岐点(CVP)とキャッシュフロー過不足分岐点の違いを示しています。必要資金を確保するには損益分岐点売上高ではなく、キャッシュフロー過不足分岐点売上高を達成する必要があります。

(1)損益分岐点売上高

損益分岐点売上高とは、総費用と売上高が一致するポイントで、利益も損失も出ない売上高のことです。ほとんどの企業は、この損益分岐点売上高を確認して、それ以上の売上達成を目指しています。しかし、損益分岐点売上高を超える売上高を達成しても、必要キャッシュフロー獲得が頭になければ、借入金に頼った経営を当然のこととして続けている多くの企業においては、苦しい経営を続けることになります。損益分岐点売上高(CVP経営)では、借入金体質の企業においては、借入金の返済に悩む日々が続きますし、また、キャッシュを獲得する経営への転換もできません。キャッシュバランス経営(CB経営)への転換こそが「キャッシュを増やす経営」への入り口になるのです。

(2)キャッシュフロー過不足分岐点売上高

借入金の返済に悩む多くの中小企業の経営支援を通じて、私が考案した経営手法が、キャッシュフロー過不足分岐点売上高達成を目指した「キャッシュバランス経営(CB経営)」です。このキャッシュバランス経営によって、自己資本比率の低い企業や債務超過で借入金返済に悩んでいた企業が計画的にキャッシュを獲得できるようになり、見違えるように成長します。 つまり、算出したキャッシュフロー過不足分岐点売上高達成のために「戦略的中期経営計画」を立案して、その計画達成のために、経営戦略やマーケティング戦略も活用して経営革新を図っていくことになります。

経営における必要な資金とは何でしょうか。経営上、必要な資金には、日々の事業活動に必要な経費、借入金のある企業であれば支払利息と返済資金、さらに将来の企業発展に向けた投資資金などがあります。

キャッシュフロー計算書の理想的な状態を三つの項目の関連で見ると「営業活動によるキャッシュフローがプラスで投資活動によるキャッシュフローを上回っている、財務活動によるキャッシュフローがマイナス」という関係です。これは、「本業が好調でキャッシュが増え、その増えたキャッシュで将来に向けた投資をし、借入金の返済が進んでいる」状態を示しています。