「製品と商品の理解」で伸びる会社

「社長、お宅の会社のお客さんは誰ですか」といきなり聞かれて明確に答えられますか。

会社は顧客に必要なものやサービスを有償で提供して、利益を上げ、その利益でまた顧客が必要とする新たなものやサービスを創り出して提供し利益を上げて継続していくのです。従って、会社は常に「顧客が必要とするものやサービス」を提供していくことで永続的に発展していくのです。

しかし、多くの会社は、何故、たくさんの売れない在庫を抱えて資金繰りに苦しんでいるのでしょうか。この「何故、売れない在庫なのか」を考えて行動することであなたの会社も成長していけるのです。「売れない」ということは「お客様が買ってくれない」からであり、「何故、買ってくれないか」その理由は「お客様にとって欲しいものでない」からです。従って、「お客様が欲しいもの」であれば、間違いなく「売れる」のです。

ここに明確な「製品」と「商品」の違いがあるのです。「商品」とはお客さんが欲しいと思ってお金を払って買うものであり、言い換えれば、「商品」とはお客様の視点からつくられたものです。一方、「製品」とは、売り手あるいは作り手側の論理でつくられたものを言います。会社の倉庫に山ほど積まれている売れない在庫品は「製品」であり、会社の倉庫から、あるいは店の棚から毎日、お客様が買っていくものは「商品」なのです。

栃木県のある商店街にある昔からの百貨店(いわゆる何でも屋さん)の社長から相談がありました。「最近、顧客を郊外の大型店にとられ、商店街への来街者も減り、売上が減少しています。どのように経営していったらよいのでしょうか」という相談です。

早速、この店舗に訪問してみると、2階建ての店舗には、顧客の動線無視、店内を歩いて邪魔になるほどモノが、そこここに置かれています。2階へつながる階段にも両脇にモノが雑然と置かれています。モノの動きのないことが一目瞭然です。

「社長、お宅のお店のお客さんは誰ですか」と社長にいきなり尋ねてみました。一瞬、面食らったようでしたが、ためらいながら答えが返ってきました。「お店に来る人です」。確かにお店に来る人はお客さんでしょうが、その人が今、来ないから社長は困っているわけです。

そこで、社長に「店舗コンセプト」を明確にすることの大切さ、つまり、店舗を経営する場合には、「誰に」「何を」「どのようにして」を明確にすることが大切であることを話し、「誰」が明確であれば、その「誰」が欲しいもの、つまり、「何を」の商品が明確になり、また、その「誰」が望んでいる方法での「どのようにして」が明確になり、ビジネスが成り立つのだという説明しました。

 

1週間ほど経ってから再度訪問すると、社長は見違えるほど成長していました。この周辺には、主婦、幼児、高齢者、学生、サラリーマン、OL、観光客、がいること、そして自分はまず、地元の高齢化も進んでいるので、「高齢者」をお客様と考えたい、と明確な答えが返ってきました。そして、さらに自分が考えたという店舗コンセプトを話してくれました。「地元の高齢者に」「高齢者が必要とする生活用品を」「御用聞きをして注文を受け配達する」というものでした。

念のため、何故、顧客を高齢者にしたのかを尋ねると、地元の高齢者には昔から店に来てくれていたなじみの客が多く、自分も訪問して会ってみたい、とのことでした。確かにこのような状況であれば、顧客との信頼関係もしっかり再構築できるでしょう。

この店舗コンセプトができた時点で、店に散在していた「製品」が「商品」となり、発展していくことになったのです。この社長は今、店舗での販売を奥様に任せて、次なる「誰に」を模索しています。

【チェックしてみよう】

・自社の顧客は誰でしょうか。明確にしてみましょう。

・自社の顧客が必要としているものは何でしょうか。

・自社の顧客はあなたに何を期待しているのでしょうか。

・「誰に」「何を」「どのようにして」提供するか事業を見直してみましょう。

・自社の在庫品と顧客の関係を整理してみましょう。