「異業種情報」で伸びる会社・つぶれる会社

ほとんどの全国の商工会議所や商工会では経営者向けの異業種交流会のような催事を定期的に催しています。この交流会に参加しているのは、企業を実際に経営し、自らが市場や技術に精通している経営者ですので、このような交流会に参加することで自社とは違う異なる業界の活きた情報を得ることが出来ると同時に、新たなビジネスのパートナーや事業連携の可能性など多くの潜在的なメリットがあります。異業種交流会に参加している経営者を見るとその交流を活用している経営者と活用の仕方を考えずに、あるいは知らずに、ただ参加しているだけの経営者の二通りがあります。

従業員6人ほどの中小サービス業の後継者は、参加する目的意識もなく、単に商工会議所の奨めで異業種交流会に参加しています。会に参加しても積極的に名刺交換するわけでもなく、ただ、会の運営の流れに従っているだけです。当然のこととして、何ら成果を生まれていません。

従業員15人程度の中小製造業のA社の社長は、地域の商工会議所や県の団体が主催する異業種交流会に積極的に参加しています。この社長がこのような交流会に参加する狙いは明確で、常に自社で開発する商品の販路に係る連携先の発掘や情報の収集です。従って、これらの会合で名刺交換する時、この社長は決まって「新製品〇〇を開発して販路を探しているA社の〇〇です」と挨拶します。これで「新製品〇〇」が相手の印象に残り、相手は必ず、「それはどのような製品ですか」と聞いてくるのです。この挨拶の仕方でこの社長はこれまでも複数の自社製品の販路を探し出してきました。

A社長は、今回も新たな製品を開発したのを機に、複数の異業種交流会に参加しました。今回はうまく販路を探し当てることが出来ませんでしたが、A社の技術に興味のある大手企業の開発者と巡り合うことが出来ました。これによって、自社の技術を使って、この大手企業の試作品を製作することができ、この大手企業へのOEM供給契約にこぎつけることが出来ました。

このA社の社長のように自分なりの目的をもって異業種交流会に参加することで様々な事業発展の機会が得られるのです。

そこでもう少し、根本的になぜ、経営者にとって異業種の情報が必要なのかを考えてみましょう。

日本の経済の成長段階を顧みますと成長期―高度成長期―成熟期―再構築期と辿ってきています。成長期においては、技術を欧米各国などから技術提携の形で導入し、技術を高度化させて大量低コスト生産、大量販売の高度成長期へとつないできました。つまり、この時期は各企業内部の資源に目を向けていかに効率のよいモノづくりをするかを考え、成長することを考えて収益を上げる経営でよかったのです。しかし、高度成長期を終え成熟期・再構築期となった今、企業の成長が止まり、一方では顧客のライフスタイルの変化と共にニーズが多様化し、大量生産が適応しない時代になりました。つまり、多様化する個々のニーズに適応させる経営が必要な時代となったのです。

顧客の個々のニーズに対応し、顧客の付加価値を高めていく経営へ切り替えていくためには、これまでの企業内部の資源充実だけでは対応できない時代になり、企業としては外部の資源を積極的に取り入れていくことが必要な時代になったのです。つまり、今の経営に必要なキーワードは「外部連携による不足資源の充実」なのです。