コスト削減の着眼点

コストダウンの考え方は2つあります。1つは、標準の原価を定めて、その標準を制御・維持する「コストコントール(原価統制)」のことです。これは、計画(Plan)-実施(Do)-チェック(Check)-アクション(Action)のステップを実践することで計画した原価を維持する活動です。たとえば、製造現場では、品目について設定されている標準時間に対して、その時間を大きくオーバーすれば、その原因が何であるのかを確認し、改善を促すしくみです。もう1つは、標準の原価に対して、計画した標準となる品目のコスト値そのものを改定する活動です。例えば、ここに標準原価が10,000円のプリンタがあるとします。これは、現在の作り方で設定された金額です。ところが、一部の材料を金属から安い樹脂材料に変更できた、新しい加工方法、最新鋭の設備機械の導入など作り方を変えることによって、作業の時間を15分から10分に短縮できたなど従来よりも1,000円安く作れるようになった。このように、投入する生産要素としての原材料、作業者、設備機械、方法を変えることによって、従来の標準原価の値を改定していくことです。

製造原価は、大きく原材料費・労務費(人件費)・製造経費(外注加工費、消耗品費、水道光熱費など)の3つに分けることができます。この3つの項目を減らすことが、直接コストダウンにつながる要因となります。しかしながら、無計画にコストを減らすと、さまざまな問題が生じます。安易に人員を削減すると、品質の低下や納期遅れを招く可能性があります。また、無理に仕入単価の引き下げを要求すれば、長年で築いた仕入先・外注先との信頼関係を壊してしまうかもしれません。既存の生産体制を維持したまま製造原価を引き下げるには、安易なコストダウンをするのではなく、さまざまな「ムダ」を検証し、排除する必要があります。外注加工費のムダの排除も重要な要素です。

< 外注加工費のムダの排除手順>

1.自社の生産実績を定期的に数値データとして収集

2.内製・外製の区分を明確にする

3.自社で生産できないもの、自社生産では効率の悪いものを外注化する

外注加工の基本的な考え方は、社内生産能力の見極めをしたうえで「社内で足りないものの補完」ですので、余力があり、自社生産できるものを外注先に頼ってしまっては、製造原価が上がるだけです。以前、生産が間に合わず外注先に発注した製品を、社内で余力がある現在も「惰性」で発注しているケースもあるかもしれません。外注加工費の削減のためには、まず、内製と外注の区分を明確にすることです。社内の人員と機械設備の能力をもう一度検証し、社内では何(製品・加工の種類など)をどこまで(生産可能数、リードタイムなど)生産できるかを明確にしましょう。

しかし、社内生産能力の把握も簡単なことではないでしょう。作業員が機械設備を完全に使いこなしているか、材料や時間のロスをなくすことはできないかなど、生産能力を左右する事項は多岐にわたります。真の生産能力を測る第一歩として、生産現場での「感覚」や「勘」に頼るのではなく、定期的に数値データをとることが必要になります。ただし、作業一つひとつを細かく確認するのではなく、誰が、いつ、どの機械設備で、どのくらい生産したかという簡単な作業記録を集めることから始めればよいのです。継続的に記録する習慣をつけ、生産データが蓄積されれば、実際の数値の推移をみることで、真の生産能力が浮かび上がります。数値化して集めた客観的なデータは「感覚」や「勘」とは異なる結果になるかもしれません。社内の生産能力を徹底的に検証したうえで、社内で「できること」、「できないこと」を把握していきましょう。内製と外注の範囲を明確にすることが、外注発注費のムダの排除につながります。