競争地位別戦略

競争戦略は普遍的なものではなく、企業を取り巻く外部環境によって大きく左右されます。外部環境には様々な要素がありますが、最も重要なのは競合他社との相対的関係、つまり競争地位です。業種、業界内の地位によって、リーダー、チャレンャー、フォロワー、ニッチャーという4種類の競争グループに分類出来ます。

(1)リーダーの戦略
リーダーがとるべき戦略には、周辺需要拡大戦略、同質化競争戦略があります。周辺需要拡大戦略とは、リーダーが常に市場全体を見渡し、新使用者の開拓や新用途の発見などを行ってチャレンジャーの追い上げるエリアをことごとく押さえていく戦略です。ベビーシャンプーを女性用に衣替えするなどがその例です。かつて、コピー機業界のトップに君臨していたゼロックスがこの周辺需要拡大を怠り中小企業という大きな市場を見逃し、チャレンジャーであるキャノンにトップの座を奪われた例があります。
もう一つの同質化戦略とは、チャレンジャーが行う差別化戦略の意味がないように同質化していくリーダーの戦略で、同質化戦略には、「完全同質化」と「改善同質化」があります。完全同質化とは、リーダーが下位企業とまったく同じ商品を同じ価格で提供する戦略でポカリスウェットに対するコカコーラのアクエリアスの例があり、改善同質化とは、上位企業が下位企業の商品を十分に研究し、少し改善・改良して発売する戦略で、録画をしやすくしたり、ディスプレーを見やすくしたりするような例です。

(2)チャレンジャーの戦略
チャレンジャーの戦略は、リーダー企業に対する「差別化戦略」です。顧客にとって、リーダー企業の製品やサービスとは明確に異なる製品やサービスを提供する戦略です。チャレンジャーとしては、リーダーによる同質化戦略が効力を発揮しないように、1次機能に加えて2次機能における差別化を行う必要があります。1次機能+2次機能による強力な差別化戦略については、すでに説明しました。
リーダー企業に対して差別化戦略をとっていくときのポイント(狙い)は、リーダーの資産を負債化することに特化するのが効果的です。たとえば、プラスがリーダー企業であるコクヨの強力な問屋網という絶対的な資産を「アスクル」という新たなビジネスモデルを構築することで負債化し、大きな成功を収めています。リーダー企業に同質化されないためには、リーダー企業を分析し、彼らの絶大な資産を負債化することを考慮するべきです。

(3)フォロワーの戦略
フォロワーの戦略は、リーダーやチャレンジャーの製品やサービスを模倣する戦略です。従って、低価格、低収益の市場が対象となります。フォロワーの地位ではあまり利潤獲得は期待できませんので、独自の技術(コア・コンピタンス)を再確認、再構築することで独自の製品・サービスを創り出し、チャレンジャーあるいはニッチャーの位置を確保すべきです。そのために戦略全体の見直しもさることながら、とくにSTP戦略の見直しを図ることが重要です。

(4)ニッチャーの戦略
ニッチャーの戦略は、リーダーが全市場をターゲットとするのに対して、ニッチャーは特定市場をターゲットとする以外、戦略は全くリーダーのとる戦略と同じです。特定領域でのトップ、つまりニッチトップの戦略です。