ポーターの戦略構造

ポーターの競争戦略の構造

競争戦略には、基本的に二つの戦略論があります。一つは、ポーターによる理論で、企業の外部環境要因に着目し、収益力の高い魅力的な業界を特定しその中での優位なポジションを確立することが競争優位を獲得することになるとの主張で、市場ポジショニング・ビューと呼ばれています。

これに対して、ジェイ・バーニーらが唱えた戦略論で競争優位の源泉を企業の内部資源に求める資源ベース・ビューと言われるものがあります。「持続的競争優位を確立する要因は、所属する業界の特質ではなく、その企業がその業界に提供する能力であり、企業戦略の一貫としてこの種の能力の開発を目指し、そのための組織が適切に編成されている企業は、持続的競争優位を達成できる」としています。つまり、持続的競争優位の源泉となるのはその企業が保有する独自の能力となります。

このように市場ポジショニング・ビューと資源ベース・ビューは競争優位の源泉を全く異なった要因に求めています。私がブログ「今瀬勇二の二代目塾」に連載しているコア・コンピタンス経営は、資源ベース・ビューの代表的なものです。

 

5フォースモデル:競争構造を決定する基本的競争要因

企業が経営戦略を策定する際の基礎作業として、進出する業界、あるいは現在事業展開している業界内の構造・競争要因を分析する必要があります。ポーターによれば、業界内の競争状況は5つの要因によって決まるといいます。5つの要因とは、新規参入の脅威代替品の脅威買い手の交渉力売り手の交渉力業者間の敵対関係、です。言い換えれば、この5つの要因が自社の事業にどのように影響を与えるかによって、業界全体の競争関係の状態やその業界の魅力度(収益力が高いかどうか)が左右されるということです。ともすると企業が競争環境を考えるとき、その業界内の競争のみを考えがちですが、真の競争分析は既存の競争業者だけにとどまることなく、業界の競争の激しさと魅力度を左右する5つの競争要因を分析し、その中で最大の競争要因に対処することが重要になります。

 

三つの基本戦略

企業が発展するためには競合他社に対する競争優位の確保が必要です。これまで分析した5つの競争要因(ファイブフォース・モデル)により見出した最大の競争要因に対して、競争優位の源泉を見出して競争戦略を打ち立てることになります。ポーターによれば、競争優位の源泉は、コストリーダーシップ、差別化、集中化の三つであり、この3つを基本競争戦略と呼びます。

 

 5フォースモデルと三つの基本戦略の関係を図示すると以下のようになります。これがポーターの競争戦略の構造です。

 

 

<ポーターの競争戦略の構造>